特に子どもがいる家庭の場合、子どもの年齢によって適切な非常食が異なりますし、アレルギーを持っているために支給された食事や炊き出しが食べられないといったケースが考えられます。
ここでは子どものどんな部分に注意して非常食を準備すればいいのか、年齢別に解説していきます。
子どもの非常食の準備はなぜ必要か
大規模な自然災害の発生を何度も経験してきた日本では、被災時の対応もかなりスムーズにおこなわれるようになってきました。そのため避難所への支給やボランティアによる炊き出しなど、被災者の食事面のケアも良化傾向にあります。
しかし、乳幼児が食べられるものが少なかったり、味つけが子ども向けでなかったり、アレルギーを持つ人は食べられなかったり、まだまだ対応が不充分な面もあると言えるでしょう。
また、避難所生活を送るうち、災害の恐怖や不安、突然の環境の変化によるストレスなどによって、食欲を失う子どもや、体調を崩して食事を取れなくなる子どもが続出することもありえます。洗髪や入浴を満足におこなえないため、普段よりも不衛生な環境となってしまい、病気にかかる可能性もあります。
こうした影響は集団内で広がりやすいので、「うちの子は元気だから大丈夫」などと思い込まず、いろいろな状況を想定して非常食を準備しておいたほうが賢明です。
赤ちゃんのための非常食は月齢を考えて
支給品や炊き出しでは、赤ちゃんの食事として不適切な場合もあるでしょう。それゆえ赤ちゃんのいる家庭では専用の非常食を用意しておかなければなりません。しかし、赤ちゃんは月齢によって食べられるものが少しずつ変化していくので、注意が必要です。
生後5~6カ月の赤ちゃんは、なめらかにすりつぶされた状態のものや、簡単に飲み込めるものならば食べられます。生後5~6カ月用のレトルト離乳食やおかゆ、野菜ジュースや粉ミルクなどを準備しておくといいでしょう。缶詰のチキンやツナなどを、柔らかくほぐして与えるという方法もあります。
生後7~8カ月の赤ちゃんの場合、舌の力で潰せる固さのものなら食べられるようになります。上記の非常食に加え、生後7~8カ月用のレトルト離乳食や雑炊、パンの缶詰やフォローアップミルクなどを用意しておくといいでしょう。
生後9~11カ月になると歯茎で潰して食べられるようになるので、バナナ程度の固さならば摂取可能になります。生後9~11カ月用のレトルト離乳食やご飯、果物の缶詰を細かくほぐしたものなどが、非常食のラインアップに加わります。
生後12~18カ月の赤ちゃんは、歯が生えてくることで噛み潰せるものが多くなります。ここまで記載した非常食に加え、生後12~18カ月用のレトルト離乳食、そしてミートボールくらいの固さであれば多くの食材を食べることができるでしょう。ただし適度な固さの非常食でも、刺激の強いものや消化の悪いもの、喉に詰まりやすいものなどは避けたほうが無難です。
幼児のための非常食は食べやすいものを
子どもも幼児期になれば、大抵のものを食べられるようになります。とは言え、乳歯は永久歯よりも強度が低いですし、虫歯にもなりやすいという性質を持ちます。さらに生え替わりで歯が抜けてしまっている子どももいることでしょう。当然ながらものを噛み砕く力が、大人よりも弱いという点も考慮しなければいけません。
こうした理由もあって、幼児期の子どもの場合、カンパンや固い食材を食べるのが難しいことがあります。またなんとか食べることができたとしても、顎や歯への負担の大きい食事が続くと、顎の関節を痛めてしまったり、歯が欠けてしまったりといった事態を招く可能性もあるでしょう。
そのため幼児期の子どもがいる家庭では、あまり強く噛まなくても食べられる柔らかめのお菓子や、ゼリー飲料などを非常食として用意しておくといいでしょう。
小学生以上の子ども用も考えておこう
小学生以上の年齢になってもまだまだ子どもは精神的に未熟なため、避難所での生活によって多くのストレスを抱えてしまうことがあります。
さらに不慣れな環境で疲労も重なりますから、体調を維持するのが困難なケースも考えられます。体調不良を想定して、消化しやすいおかゆや、口当たりのいいゼリー飲料などを非常食として準備しておくといいでしょう。
育ち盛りの年齢の子ども場合、支給品や炊き出しだけでは食事量が足りないことも考えられます。そのため手軽にエネルギー補給できるチョコレートやクッキー、キャラメルといったお菓子や、ドライフルーツや乾燥餅などといった腹持ちのいい非常食もあると便利でしょう。
非常食を準備するときの注意点
非常食は、家族が3日間生活できる分量を準備するのが目安だとされています。ただし、これは最低限の分量であり、被災状況によってはもっと多くの非常食が必要になる場合もありえます。支援物資が届きにくいような地域に住んでいる家庭では、5~10日分程度の非常食を最低限確保しておいたほうが安心です。
非常食の保管場所ですが、直射日光が当たらない風通しのいい所がベストではあるものの、すぐに持ち出せなければ意味がありません。さらに家のどこにいる時に災害が発生するかわかりませんから、玄関や寝室、リビングや車のトランクなど、いろいろな場所(の取り出しやすい位置)に分散して保管しておくのが望ましいでしょう。
非常食の保存期間にも注意しましょう。災害用の保存水や非常食は、5年以上持つものもありますが、短いものだと1年程度で保存期間が切れてしまうものもあります。可能であれば、1年くらいの頻度で非常食の保存期間の確認をおこなったほうがいいでしょう。加えて、子どもがいる家庭では、子どもの成長に合わせた非常食への見直しが必要になります。特に生後12カ月くらいまでは子どもの発育状況をよく観察し、こまめに非常食を入れ替えましょう。
そして子どもがアレルギー体質の場合、支給品や炊き出しを口にできないケースもありえます。子どもがどんな食材にアレルギー反応を起こすかしっかりと把握し、摂取可能な非常食を充分に準備しておくことが大切です。
まとめ
被災時はどの家庭の子どもにも、食欲減退や体調不良などが起こりやすいと言えます。子どもでも食べやすいものはもちろんのこと、気分が優れなくても喉を通りやすいものなど、様々な事態を考慮しながら、非常食を用意することが大切です。
また、離乳食しか口にできない乳幼児や、アレルギーがある子どもの場合、支援物資に頼らず十分な非常食を準備するようにしましょう。それから、同じような食事が続くと子どもは嫌気が差してしまうこともあるため、なるべくさまざまな種類や味つけの非常食を準備することもポイントです。
こうして取り揃えた非常食は、1年に1度くらいの頻度でチェックし、保存期間や子どもの成長に合わせて買い替えていきましょう。
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